働きながら年金満額をもらう方法を税理士が解説【在職老齢年金・支給停止の仕組み】
働きながら年金を満額もらうには「48万円の壁」の仕組みを知ることが第一歩です。
在職老齢年金とは?年金が減額される仕組み
老齢年金は原則65歳から受け取ることができます。60歳までの間に繰り上げて減額された年金を受け取る「繰り上げ受給」や、75歳までの間に繰り下げて増額された年金を受け取る「繰り下げ受給」を選択することもできます。
会社で働きながら受け取る老齢年金のことを在職老齢年金と言います。この制度では、月給や賞与の金額によっては受け取る年金が一部カット、あるいは全額カットされてしまう仕組みになっています。
📌 ポイント
在職老齢年金の支給停止を逃れる方法として、多くの方がすでに実践していることがあります。
- 給料を抑えて働く
- 業務委託契約に切り替えて個人事業主として働く
これらの方法の詳細と、さらに効果的な方法を以下で解説します。
📝 このセクションのまとめ
- 会社員として働きながら受け取る老齢年金を「在職老齢年金」という
- 月給・賞与の金額によって年金が一部または全額カットされる
- 支給停止の仕組みを理解することが対策の第一歩
支給停止額の計算式を理解する
支給停止の仕組みを知らないことには対策も始まりません。月額の支給停止額は以下の計算式で求められます。
📌 支給停止額の計算式
月額支給停止額 =(基本月額 + 総報酬月額相当額 - 48万円)× 1/2
基本月額と総報酬月額相当額の合計が48万円を超えた部分の1/2に相当する年金がカットされます。
この計算式には「基本月額」と「総報酬月額相当額」という2つの重要な概念が登場します。それぞれの内容を順番に見ていきましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 支給停止の壁は月額合計48万円
- 48万円超の部分の半額が年金からカットされる
- 計算式の鍵は「基本月額」と「総報酬月額相当額」の2つ
基本月額とは?老齢年金の2階建て構造を理解する
基本月額とは、老齢厚生年金の1か月相当分のことです。老齢年金は以下の2階建て構造で構成されています。
| 構成要素 | 内容 | 支給停止の対象 |
|---|---|---|
| 老齢厚生年金(報酬比例部分) | 厚生年金の加入実績に応じた年金 | ✅ 対象(基本月額に取り込まれる) |
| 老齢基礎年金(国民年金部分) | 国民年金の加入実績に応じた年金 | ❌ 対象外(満額支給) |
| 加給年金 | 65歳未満の年下配偶者や高校生以下の子がいる場合に支給 | ⚠️ 支給停止の対象だが基本月額には含めない |
| 経過的加算 | 老齢基礎年金の調整計算 | ❌ 対象外(満額支給) |
📌 ポイント
老齢基礎年金と経過的加算は支給停止の対象外です。どれだけ給料が高くても、これらは必ず満額が支給されます。また、厚生年金基金がある場合は、その金額も基本月額に取り込まれます。
📝 このセクションのまとめ
- 基本月額=老齢厚生年金の月額分(加給年金は含まない)
- 老齢基礎年金・経過的加算はカットされず必ず満額もらえる
- 厚生年金基金がある場合はその分も基本月額に加算される
総報酬月額相当額とは?標準報酬月額と標準賞与額の仕組み
総報酬月額相当額は、支給停止を回避するうえで最も重要なポイントです。以下の計算式で求められます。
📌 総報酬月額相当額の計算式
総報酬月額相当額 = 標準報酬月額 +(直近1年間の標準賞与額 ÷ 12か月)
標準報酬月額とは、毎年1回、4月・5月・6月の給与の平均額をもとに決定され、9月から改定適用になるものです。原則として以降1年間は変わりません。
実際の給料の金額と標準報酬月額は若干ずれています。保険料額表を例に確認すると、標準報酬月額30万円の箇所では、3か月の給料平均(報酬月額)が29万円以上31万円未満の範囲にある人が全員この30万円に該当します。
次に標準賞与額について説明します。「直近1年間」とは、その月以前の1年間のことです。たとえば3月の総報酬月額相当額を計算する際は、前年4月から3月までの標準賞与額を合計して12か月で割ります。
標準賞与額とは、支給した賞与の1,000円未満の端数を切り捨てた金額です。ただし、ここに非常に重要な上限があります。
⚠️ 重要な上限ルール
厚生年金保険における標準賞与額の上限は月間150万円です。月間150万円をいくら超えて賞与を支払っても、標準賞与額は150万円で打ち止めとなり、老齢厚生年金の支給停止の計算には150万円しか取り込まれません。この上限こそが、後述する「裏ワザ」の核心です。
📝 このセクションのまとめ
- 総報酬月額相当額=標準報酬月額+(直近1年間の標準賞与額÷12)
- 標準報酬月額は4〜6月の給与平均から決定され、9月改定
- 標準賞与額の上限は月間150万円(厚生年金保険)
- この上限を利用することが支給停止回避の鍵になる
具体例で計算!在職老齢年金の支給停止額
ここまでの内容を踏まえて、具体的な数字で支給停止額を計算してみましょう。
| 条件 | 金額 |
|---|---|
| 老齢年金(月額合計) | 21万円 |
| うち老齢厚生年金 | 15万円 |
| うち老齢基礎年金 | 6万円 |
| 標準報酬月額 | 41万円 |
| 給料(固定) | 40万円 |
| 直近1年間の賞与 | 60万円 |
この条件で支給停止額を計算します。
- 基本月額:老齢厚生年金 15万円(老齢基礎年金6万円は対象外)
- 標準賞与額÷12:60万円 ÷ 12 = 5万円
- 総報酬月額相当額:41万円 + 5万円 = 46万円
- 合計:15万円(基本月額)+ 46万円(総報酬月額相当額)= 61万円
- 48万円超の部分:61万円 - 48万円 = 13万円
- 月額支給停止額:13万円 × 1/2 = 6万5,000円
この例では、月額6万5,000円の老齢厚生年金が支給停止となります。
⚠️ 注意:支給停止された年金は二度と戻らない
支給停止になった老齢厚生年金は、二度と受け取ることができません。繰り下げ受給と勘違いして「将来増額されて支給される」と思っている方がいますが、それは誤りです。支給停止された年金は将来にわたって支給されることはありません。
📝 このセクションのまとめ
- 基本月額15万円+総報酬月額相当額46万円=61万円(48万円超)
- 超過分13万円の1/2=月額6万5,000円が支給停止
- 支給停止された年金は将来も含めて二度と受け取れない
働きながら年金を満額もらう3つの方法
会社に勤務して厚生年金に加入している人は、在職老齢年金制度によって老齢厚生年金が支給停止になってしまいます。では、支給停止を逃れるにはどうすればよいでしょうか。
- 方法①:個人事業主として働く 会社員を辞めて個人事業主になれば、いくら収入が多くても年金が減額されることはありません。会社と業務委託契約を結び、会社員ではなく個人事業主として仕事をする形態に変えることが有効です(会社との相談次第)。
- 方法②:支給停止にならない給与水準に抑える 定年後の再雇用では現役の頃よりも給料が大幅に下がることが多いです。まずご自身で支給停止とならない給与水準を計算し、その給料以下に抑える働き方を会社と相談してみましょう。
- 方法③:役員報酬の支払い方を変える(社長・役員向け) 年間の報酬額合計を変えずに、在職老齢年金を全額もらう方法があります。詳しくは次のセクションで解説します。
📝 このセクションのまとめ
- 個人事業主(業務委託)として働けば年金は減額されない
- 支給停止とならない給与水準を計算して会社と交渉する
- 社長・役員は報酬の「出し方」を変えることで回避できる
【社長・役員向け裏ワザ】役員賞与を活用した支給停止回避策
社長・役員の方向けに、年間の報酬額合計は変えないまま在職老齢年金を全額もらう方法があります。標準賞与額の上限(月間150万円)を活用するやり方です。
賞与はいくら支払っても標準賞与額の上限は月間150万円です。つまり、月々の役員報酬を引き下げて、その分を役員賞与として支払えば、総報酬月額相当額を大幅に圧縮できます。
先ほどの具体例をアレンジして、支給停止にならない役員報酬の組み方を見てみましょう。
| 項目 | 変更前(支給停止あり) | 変更後(支給停止なし) |
|---|---|---|
| 役員報酬(月額) | 40万円 | 20万円 |
| 役員賞与(年1回) | 60万円 | 1,500万円 |
| 年間報酬合計 | 480万円+60万円=540万円 | 240万円+1,500万円=1,740万円 |
| 標準報酬月額 | 41万円 | 約20万円台 |
| 標準賞与額÷12 | 5万円 | 150万円÷12=12万5,000円(上限適用) |
| 基本月額+総報酬月額相当額 | 61万円(48万円超) | 47万5,000円(48万円以下) |
| 老齢厚生年金の支給停止 | あり(月6万5,000円カット) | なし(満額支給) |
役員報酬を月額20万円に、役員賞与を年1回1,500万円に設定することで、基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万5,000円となり、48万円以下に収まります。その結果、老齢厚生年金は支給停止になりません。
⚠️ 注意:事前確定届出給与の届出が必要
役員賞与を損金(経費)にするためには、「事前確定届出給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。この手続きを行わなければ、役員賞与を損金として認めてもらうことができません。必ず事前に税理士へご相談ください。
⚠️ デメリット:役員退職金に影響が出る
この方法は役員報酬の月額を大幅に引き下げるため、将来の役員退職金をさほど高く設定できなくなるというデメリットがあります。退職金の計算は役員報酬の月額に基づくことが多いため、長期的な視点で総合的に判断することが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 標準賞与額の上限(月間150万円)を活用して総報酬月額相当額を圧縮できる
- 月額役員報酬を下げ、その分を年1回の役員賞与で支払う方法が有効
- 役員賞与を損金にするには「事前確定届出給与に関する届出書」の提出が必須
- 役員報酬月額を下げると将来の役員退職金が少なくなるデメリットがある
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士KOBAYASHIちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士KOBAYASHIちゃんねるを応援しています!
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