在職老齢年金62万円緩和の罠?控除額280万円の壁で高年収者に増税【税理士が解説】

在職老齢年金62万円緩和の罠?控除額280万円の壁で高年収者に増税【税理士が解説】
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在職老齢年金の上限が62万円に緩和される一方、給与・年金の控除合計を280万円に制限する税制改正が計画中。朗報か罠か、シミュレーションで徹底検証します。

在職老齢年金とは?年金が削られる仕組み

社会保険料はめちゃめちゃ高いですよね。現役世代にとってこの社会保険料の負担は非常に重たくなっています。そんな中、報酬のある人、しっかり稼いでいる方は、高齢者かどうかに関わらず年金制度を支える側になってもらおうという考え方があります。

在職老齢年金制度とは、年金を受給しながら給与収入もあるという方、つまり「給与・年金ダブル受給」の方の合計収入が一定額を超えると、年金が削られるという制度です。

📌 ポイント:年金がカットされる仕組み

  • 給与月収(賞与を月割りしたものを含む)+年金月収の合計が月50万円を超えると年金カットの対象
  • 超過分の1/2が年金から差し引かれる
  • カットされるのは厚生年金部分のみ(国民年金部分は除く)

例えば、給与月収30万円・年金月収30万円という方は合計60万円で50万円を10万円超えています。この場合、超過分10万円の1/2にあたる5万円の年金がカットされます。

⚠️ 注意

知らずにバリバリ稼いでしまうと、気づかないうちに年金をカットされて損をしてしまうケースがあります。年金受給中に就労する場合は、この制度を必ず把握しておきましょう。

📝 このセクションのまとめ

  • 在職老齢年金は、給与+年金が月50万円を超えると超過分の1/2が年金カットされる制度
  • カット対象は厚生年金部分のみ
  • 保険料を払ってきたのに年金が削られるという批判も多い制度

2026年4月から上限が62万円に緩和へ

我が国は今、深刻な人手不足です。あらゆる業界で採用活動しても人が取れないという話をよく聞きます。そこで、高齢者の「働き損」を解消して人手不足対策につなげていこうということで、大きな制度改正が決まりました。

2026年(令和8年)4月から、65歳以上の高齢者については、この上限が月50万円から月62万円に引き上げられることがほぼ決まっています。

改正前改正後(2026年4月〜)
50万円を超えると年金カット62万円を超えると年金カット
対象:65歳以上の年金受給者対象:65歳以上の年金受給者

厚生労働省の資料によると、65歳以上の在職老齢年金制度の対象者は全体で約38万人いる中で、なんと約16%にあたる方が年金支給停止(超過分の1/2カット)を受けているという状況です。以前はこの上限ラインが47万円や28万円だったこともあり、物価水準の上昇とともに見直しが続けられてきました。この16%という比率があまりにも高すぎるということで、緩和が決定しました。

📝 このセクションのまとめ

  • 2026年4月から65歳以上の在職老齢年金の上限が月50万円→62万円に緩和
  • 背景は人手不足解消と高齢者の「働き損」の是正
  • 現在、対象者の約16%が年金カットを受けている

抱き合わせで登場「控除額280万円の壁」とは

在職老齢年金の緩和自体は非常に喜ばしい制度改正です。ところが、この緩和と抱き合わせするかのように、令和7年度税制改正大綱に給与・年金ダブル受給者の控除額を制限するという内容が盛り込まれました。

ここで言う「控除額」とは、会社員・サラリーマンの方の給与所得控除と、年金受給者の方の公的年金等控除の2つを指します。それぞれの控除の仕組みを確認しましょう。

給与所得控除・公的年金等控除の仕組みを整理

まず、会社員の税金計算の流れを確認します。税引前・社会保険料控除前の給与額面収入から給与所得控除を差し引いて「給与所得」を求め、さらに基礎控除などの所得控除を引いて「課税所得」を算出し、税率をかけて所得税を計算します。

給与所得控除の金額は、給与収入が大きくなるほど大きくなりますが、年収850万円を超えると上限195万円で頭打ちとなります。なお、令和7年度税制改正で最低額が55万円から65万円に引き上げられることがほぼ決まっています。

給与収入給与所得控除額
〜収入に応じて段階的に増加最低 65万円(改正後)
年収850万円超上限 195万円(頭打ち)

一方、年金受給者の税金計算も同様の流れで、年金額面収入から公的年金等控除を差し引いて「雑所得」を求めます。

年齢区分公的年金等控除の最低額公的年金等控除の最高額
65歳以上110万円195万円(年金年収1,000万円超の場合)
65歳未満60万円195万円(年金年収1,000万円超の場合)

給与と年金の両方がある方は、それぞれで給与所得と雑所得を計算し、合算してから所得控除を引いて課税所得を求めます。所得税と住民税を合わせた最低税率は約15%、最高税率は55%です。

📌 問題視されてきた「二重の高控除」

かねてから指摘されてきたのが、高収入の給与・年金ダブル受給者が享受できる控除の大きさです。

  • 給与所得控除のマックス:195万円(高すぎるのでは?)
  • 公的年金等控除のマックス:195万円(年金1,000万円稼ぐ人がどれだけいるのか?)
  • 合計すると最大で約400万円近くの控除が受けられる

「これはあまりにも大きすぎるのではないか」という批判が以前からありました。

そこで今回の税制改正大綱に盛り込まれたのが、給与所得控除と公的年金等控除の合計額を、どれだけ高くとも280万円を上限とするという制限です。

なお、この改正は確定ではありません。令和7年度税制改正大綱では「今回は実施しないが、令和8年度税制改正大綱に盛り込む」という書き方になっており、ほぼ決まりの方向で進んでいると考えられます。

📝 このセクションのまとめ

  • 給与所得控除と公的年金等控除、それぞれ最大195万円で合計最大約400万円の控除が可能だった
  • この合計を上限280万円に制限する改正が計画されている
  • 確定ではなく、令和8年度税制改正大綱への盛り込みが予定されている

シミュレーション:実際にどれだけ影響が出るのか

では、実際にどれほどの影響があるのか、65歳以上の高齢者を前提にシミュレーションしてみましょう。年金月収25万円(年収300万円)を基準に、給与月収を変えた5パターンで検証します。

パターン年金月収給与月収月収合計給与所得控除公的年金等控除控除合計280万円制限の影響
15万円35万円50万円約132万円110万円(最低額)約242万円影響なし
25万円37万円62万円(上限ライン)約132万円110万円(最低額)約242万円影響なし
25万円50万円75万円約164万円110万円(最低額)約274万円影響なし(ギリギリ)
25万円60万円85万円約182万円110万円(最低額)約292万円制限あり(控除12万円減少)
25万円97.5万円100万円超195万円(上限)110万円(最低額)約305万円制限あり(控除25万円減少)

パターン④・⑤のように控除が制限された場合、実際の税負担はどれぐらい変わるのでしょうか。所得税・住民税を合わせた実効税率で試算すると、次のようになります。

パターン控除の減少額手取りの減少(概算)
④(給与月60万円)12万円減少年間約3万円の手取り減
⑤(給与月97.5万円超)25万円減少年間約6万円の手取り減

📌 シミュレーションの結論

ご家族の事情などによって変わりますが、影響を受けるのは年間3万円〜6万円程度の手取り減にとどまります。また、そもそも280万円の控除上限に引っかかるのは、年金をもらいながら給与月収60万円以上を稼ぐ方に限られます。これは会社オーナーや雇われ社長クラスの方がほとんどで、ごくごく少数です。

📝 このセクションのまとめ

  • 年金月収25万円の場合、給与月収60万円以上で初めて280万円の壁に引っかかる
  • 影響額は年間3万〜6万円程度の手取り減
  • 影響を受けるのはオーナー社長クラスのごく一部の高収入者のみ

朗報か罠か?今回の改正をどう捉えるべきか

「働きやすくして稼げるようにしておいて、そこに増税をする罠なんじゃないか」という見方もできます。実際、最近の税制改正は上限や壁だらけで、なかなかやらしいですよね。

ただし、シミュレーションを見ていただいた通り、62万円の在職老齢年金緩和の恩恵を受ける方の大半は、280万円の控除上限にはかからないのが実態です。

  • 在職老齢年金の緩和(朗報):月62万円まで年金カットなしで働ける→多くの高齢者に恩恵
  • 控除280万円の壁(注意):給与月収60万円超の年金受給者が対象→影響はごく少数
  • 改正の背景:高収入の年金受給者の増加と、税負担の公平性を意識した改正

結論として、仮にこの改正が実行されたとしても、それほど恐れるものではないというのが現時点での評価です。ただし、ご自身の年金収入・給与収入の水準によって影響は変わりますので、数字のシミュレーションをしっかり行っておくことが大切です。

📝 このセクションのまとめ

  • 在職老齢年金の緩和は多くの高齢者にとって朗報
  • 控除280万円の壁は高収入の一部の方のみに影響し、影響額も年3〜6万円程度
  • 自分の収入水準でシミュレーションして、知識として理論武装しておくことが重要

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!

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