この記事の要約:会社設立の4ステップ
- 全体の流れは「①基本事項の決定 → ②定款の作成・認証 → ③資本金の払込 → ④登記申請」
- 期間はスムーズにいって約2週間〜1ヶ月。思い立ってすぐ翌日に会社は作れない
- 費用(法定費用)は株式会社で約20〜24万円かかる
- 「電子定款」を使えば4万円節約できるため、専門家に頼んだ方が総額が安くなるケースもある
- 「青色申告承認申請書」は設立から3ヶ月以内に提出しないと、初年度の節税特典が消滅
- 許認可業種(飲食・建設・運送等)は事業目的の書き方で許可取得難易度が変わる
- スタートアップ向けは「資本金1,000万円未満で消費税2年免税」など税務戦略がある
「自分の会社を作りたい」と思っても、何から手をつければいいのか分からない方は多いはずです。役所への手続きは複雑で、一つ間違えるとやり直しになり、予定していた開業日に間に合わなくなることも。
この記事では、一般的な「株式会社」を設立する流れを、時系列に沿ってわかりやすく解説します。スタートアップ・飲食・地方拠点・大手ファームなど、5社の実名コメントとともに2026年最新版で総まとめします。
ステップ1:会社の基本事項を決める(設立2週間前)
まずは会社の「憲法」となる基本ルールを決めます。ここで決めた内容が登記簿に載ることになります。後から変更すると数万円の手数料がかかるので、慎重に決めましょう。
決めるべき7つの重要項目
商号(会社名): 使える文字に制限があります。Google検索して、同名の有名企業がないかチェックしましょう。 本店所在地: 自宅にするか、賃貸オフィスか、バーチャルオフィスか。賃貸の場合、大家さんの法人登記承諾が必要です。 事業目的: 「何をする会社か」。将来やるかもしれない事業も含めておきましょう。 資本金: 1円から可能ですが、信用面から100万円以上にするのが一般的です。 発起人と役員: 誰が出資し、誰が経営するか。1人社長なら自分が両方です。 事業年度(決算月): 消費税の免税期間を最大化するため、設立月の前月を決算月にすることが多いです。 会社実印の作成: 商号が決まったら、すぐにハンコ屋さんに発注しましょう。 【実例】設立時の税理士選びは「フィーリング」も大事
墨田feel会計事務所は「Growth and change together」を掲げるスタートアップ特化の事務所(3名体制・80〜90社支援)。代表の柳本大至氏は、設立後に長く付き合う税理士選びについて次のように語っています。
税理士は一度契約すると長い付き合いになることが多いと思いますので、実力ももちろん大事ですが、ご自身とのフィーリングが合うかどうかを大切にしていただけると良いかと思います。最初は金額面で決めがちかと思いますが、多少の差であれば、フィーリングが合うかどうかで選ぶことで報酬の差以上の価値を得られると思います。
墨田feel会計事務所(東京)柳本大至氏 — スタートアップ特化・3名体制・80〜90社支援(インタビュー全文)
ステップ2:定款(ていかん)の作成と認証
決めたルールを文章化したものが「定款」です。これを作成し、公証役場(こうしょうやくば)という場所で「内容に間違いありません」というお墨付き(認証)をもらう必要があります。
【重要】「紙」か「電子」かで4万円変わる
定款を紙で印刷して提出すると、収入印紙代として4万円がかかります。しかし、PDFデータで作成する「電子定款」ならこの4万円が不要(0円)になります。
個人で電子定款を行うには専用機器やソフトが必要でハードルが高いため、ここだけ専門家に頼むか、会社設立ツールを使うのが一般的です。
(※設立費用を安く抑える仕組みについては、
「会社設立の費用は0円が当たり前?」の記事で詳しく解説しています)
ステップ3:資本金の払い込み
定款の認証が終わったら、資本金を準備します。「会社の通帳」はまだ作れないので、「発起人(自分)の個人の通帳」にお金を振り込みます。
払い込みの注意点
必ず「定款の認証日」以降に振り込む(または入金する)こと。日付が早いと無効になります 誰からの入金かわかるよう、振込人名義を表示させること 通帳の表紙、1ページ目、入金ページのコピーを取り、会社実印を押印して「払込証明書」を作成します ステップ4:法務局へ登記申請(会社設立日)
全ての書類を揃えて、法務局に提出します。この「提出した日」が会社の設立日(誕生日)になります。郵送の場合は法務局に到着した日が設立日です。
申請から約1週間〜10日ほどで登記が完了し、晴れて「登記事項証明書(登記簿謄本)」や「印鑑証明書」が取得できるようになります。
【設立日選び】縁起の良い日を選びたいときは?
「大安」「一粒万倍日」「天赦日」などの吉日を設立日にしたい経営者も多くいます。法務局の開庁日(平日のみ)と重なる吉日を逆算し、それまでに定款認証・資本金払込を終えるスケジュールを組みましょう。郵送だと到着日が読みにくいので、吉日設立を狙うなら窓口持参が確実です。
【比較】自分でやる vs 専門家(司法書士・税理士)に依頼
「手数料を払ってでも専門家に頼むべきか?」は最大の悩みどころです。実は、電子定款の4万円削減効果があるため、専門家に頼んでも実質の追加負担は数千円〜数万円で済むことが多いです。
| 項目 | 自分で全てやる場合(紙定款) | 専門家に依頼する場合(電子定款) |
|---|
| 定款印紙代 | 40,000円 | 0円 |
| 登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 |
| 定款認証手数料 | 約30,000円〜50,000円 | 約30,000円〜50,000円 |
| 専門家への報酬 | 0円 | 約40,000円 〜 100,000円 |
| 手間と時間 | 役所に何度か通う必要がある。 | 書類にハンコを押すだけ。最短期間で完了する。 |
| 実質合計 | 約22万円 + 一定の手間 | 約22万円 + 報酬(実質負担は少ない) |
※税理士と顧問契約を結ぶことを条件に、設立手数料を「0円(実費のみ)」にするキャンペーンを行っている事務所も多いため、実質的には自分でやるより安くなるケースさえあります。詳しい費用構造は
会社設立の税理士費用相場で解説しています。
【実例】札幌の独立税理士が語る「税理士選びの本質」
荒木関克己税理士事務所は「経営者の道しるべになる」を経営理念に掲げ、札幌市北区で法人顧問を軸としたコーチング型支援を展開(5名体制・2006年独立)。設立を機に税理士を探す経営者に対し、代表は次のように語っています。
税理士選びで一番大事なのは、合うか合わないかだと思います。技術的な能力はもちろん大事ですが、それ以上に「この人と長く付き合っていけるか」「話しやすいか」「信頼できるか」という感覚的な部分が重要です。私がいつもお伝えしているのは、最低でも3人から5人の税理士に会ってみてくださいということ。一人だけ会って決めるのではなく、複数の税理士と話をしてみると、自分に合う人がわかってきます。
荒木関克己税理士事務所(札幌)— 2006年独立・5名体制・コーチング型支援(インタビュー全文)
【業種別】設立時の特別な注意点
ケース①:飲食業の設立
飲食業は「食品営業許可」「深夜酒類提供飲食店営業届出」など、業態によって必要な許認可が変わります。事業目的には「飲食店の経営」だけでなく、「居酒屋・バーの経営」「酒類の小売販売」など具体的に記載しておくと、後の許認可申請がスムーズです。
ルチェーレ会計事務所は「クライアントと共に成長する」をミッションに、大阪・南船場で140社を支援する事務所(飲食店3割・美容室サロン2〜3割と店舗型ビジネスが中心)。代表の西野善博氏は店舗型ビジネスの継続性について次のように語っています。
改善や新しいことを常にやろうとしている店は生き残りますね。飲食でも美容でも、職人気質の方が多い業界なので、自分のやりたいことだけをバンってやってしまう方がいるんですけど、それがお客様に響くかどうかを考えずにやるのはしんどい。そこを一緒に考える存在でいたいんです。
ルチェーレ会計事務所(大阪・南船場)西野善博氏 — 140社支援・店舗型ビジネス特化(インタビュー全文)
ケース②:建設業・運送業(許認可業種)
建設業許可は資本金500万円以上、専任技術者の在籍など要件が厳しいです。運送業(一般貨物自動車運送事業)は車両5台以上、運行管理者の選任など。設立時の資本金・役員構成・事業目的の3点を許認可要件に合わせて設計することが重要です。
ケース③:IT・SaaS系スタートアップ
株式分割を視野に入れ、設立時の発行可能株式総数を多めに設定(10,000株以上推奨)。ストックオプション発行を見据えて種類株式の発行枠も定款に記載しておくと、後の資金調達フェーズで定款変更コストを抑えられます。
設立登記の「後」にやるべきことリスト
登記完了で安心していてはいけません。会社設立直後にやるべき手続きが山積みです。特に税務署への届出は期限があるので注意してください。
必須の届出リスト
税務署など: 「法人設立届出書」「青色申告の承認申請書(超重要)」などを提出。これを忘れると初年度の税金で大損します 年金事務所: 社長1人でも、役員報酬を出すなら社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務があります 法人口座の開設: 登記簿謄本ができたらすぐに銀行へ。最近は審査が厳しく、開設まで2週間以上かかることもザラです クラウド会計の初期設定: 法人口座・クレジットカード・freee/MFの連携、勘定科目の設計を最初に整える 創業融資の申請: 日本政策金融公庫の新創業融資は、最大1,000万円・無担保無保証。設立6ヶ月以内が狙い目 【実例】設立直後のバックオフィス立ち上げと創業融資
税理士法人notteは「残業なし、繁忙期なし、属人化なし」を掲げ、札幌でスタートアップ支援に特化。マネーフォワードクラウド一本×チーム対応制で、20〜30代の若い経営者を中心に法人50社弱を支援しています。代表の岩瀬俊太氏は設立直後の支援について次のように語っています。
会社を設立したばかり、または設立を検討している方には、ぜひ相談してほしいです。創業融資(日本政策金融公庫)のサポートも重ねてきていますし、バックオフィスの立ち上げを丸ごとお手伝いするのが今のnotteの得意なところだと思っています。
税理士法人notte(札幌)岩瀬俊太氏 — MFクラウド特化・3名チーム制・スタートアップ50社弱(インタビュー全文)
【期限注意】設立後3ヶ月以内の「青色申告承認申請書」
会社設立後、最も重要な税務手続きが「青色申告の承認申請書」の提出です。期限は「設立から3ヶ月以内」または「初年度決算日の前日」のどちらか早い方。
青色申告承認申請書を出さないと…
初年度の赤字を翌期以降に繰り越せない(10年間繰越のメリット消失) 少額減価償却資産の特例(30万円未満一括経費化)が使えない 税理士と顧問契約していれば、この届出は100%忘れずに行ってくれます。自分で手続きする場合は、Googleカレンダーに「設立から60日後」のリマインダーを必ず設定してください。
【実例】創業期から成長フェーズまで一貫支援する大手ファーム
アイネックス税理士法人は、京都本社42名・大阪7名の体制で法人550社超を支援する税理士法人。事業部制(医療事業部・M&A事業部など)で多様な業種に対応し、上場企業も担当しています。森川貴介氏は成長志向の経営者向けに次のように語っています。
弊社には、いわゆる創業期から、将来の、極端な話リタイアメントまで、事業規模の拡大も含めて総合的なご支援ができる経験と自信があります。「単なる税務を見てほしい」のではなく、「これから事業を大きくしていきたい」「成長していきたい」と強く思っておられるのであれば、ぜひ私たちにご相談ください。
アイネックス税理士法人(京都・大阪)森川貴介氏 — 京都42名/大阪7名・550社超・事業部制(インタビュー全文)
よくある質問(FAQ)
Q1. 資本金は1円でも本当に大丈夫ですか?
A. 法律上は設立可能ですが、おすすめしません。銀行口座の審査に落ちたり、取引先から信用不安を持たれるリスクがあります。また、設立直後の経費(PC購入費など)で資金不足になり、すぐに「役員借入金」が発生して会計が汚れます。最低でも100万円、できれば300万円程度あると安心です。
Q2. 自宅を本店所在地にしてもいいですか?
A. 持ち家なら問題ありません。賃貸マンションの場合、契約書で「居住用」となっている物件を勝手に会社登記すると契約違反で退去を求められるリスクがあります。必ず大家さんや管理会社の承諾を得るか、バーチャルオフィスの利用を検討しましょう。
Q3. 合同会社(LLC)と株式会社、どちらがいい?
A. 設立費用と運営の手軽さなら合同会社(約10万円・決算公告不要)、対外信用・上場可能性なら株式会社(約22万円)。BtoB中心で取引先・銀行融資に信用が必要なら株式会社、BtoC中心や個人事業のミニマム法人化なら合同会社で十分です。
Q4. 設立から決算までどのくらいの期間を空けるべき?
A. 消費税の免税期間(最大2年)を最大化するため、設立月から見て「前月」を決算月にするのが王道。例えば4月設立なら3月決算にすれば、約1年11ヶ月の免税期間を確保できます。ただし、業種の繁忙期と決算実務が重なると現場が回らなくなるので、業種特性も含めて決めましょう。
Q5. インボイス登録は設立時にすべき?
A. BtoB中心の事業なら早めに登録を推奨。BtoC中心なら2年間の消費税免税メリットを優先するため、登録は2年後でも問題なし。ただし、取引先からインボイス番号を求められる頻度が高い業界(IT・コンサル・広告等)は、設立直後の登録が事実上必須です。
Q6. 設立後の創業融資はいつ申請するのがベスト?
A. 日本政策金融公庫の新創業融資制度は、設立後6ヶ月以内が「無担保無保証・実績不問」の好条件期間。設立直後(登記簿謄本取得後すぐ)に動き始めて、設立3ヶ月以内に申請するのが王道です。設立から1年以上経つと「実績」を求められるため、ハードルが上がります。
設立後の税理士顧問料がどれくらいかかるのか知っておきたい方は、こちらの記事も参考になります。
→ 税理士の費用・顧問料の相場はいくら?規模別の適正価格を見る※本記事の内容は、執筆時点での一般的な情報に基づき作成されています。税理士資格を持たないライターが執筆しており、最新の税法や個別の事情に対応していない可能性があります。正確な情報や判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。