会社のお金を私用で使うと税金がかかる?役員貸付金の税務リスクを税理士が解説
会社のお金を社長個人が私用で使うと、税務調査や融資審査に深刻な影響が出ることをご存じですか?
今回のテーマ:法人の税金入門「役員貸付金と役員借入金」
起業して法人を作り、自分が社長に就任した場合、会社から役員報酬をもらったり配当を受け取るのは自由です。しかし、それ以外の理由で社長個人にお金を渡す場合、通常は役員貸付金として経理処理をすることになります。
一方、社長個人のお金を法人に貸し付ける場合、法人の帳簿上では役員借入金として、債務(負債)として認識しなければなりません。
| 取引の種類 | 会社側の処理 | 貸借対照表上の分類 |
|---|---|---|
| 会社 → 社長個人へ貸し付け | 役員貸付金(債権) | 資産の部 |
| 社長個人 → 会社へ貸し付け | 役員借入金(債務) | 負債の部 |
会社経営をしていると、個人にお金が足りなかったり、会社の方にお金が足りなかったりと、さまざまな事態が起こります。では、この行為は良いのか悪いのか。結論として、会社から社長個人への貸付(役員貸付金)には、税務リスクと信用毀損リスクの2つがあるということを今回は解説します。
今回の内容は次の3つで構成されています。
- 社長個人から会社にお金を貸す「役員借入金」のケース
- 会社から社長個人にお金を貸す「役員貸付金」のケース(メインテーマ)
- 役員報酬設定のコツ
📝 このセクションのまとめ
- 役員貸付金は会社の「資産」、役員借入金は会社の「負債」として計上される
- 役員貸付金(会社→社長)には税務リスクと信用毀損リスクの2つがある
- 役員借入金(社長→会社)は比較的問題が少ないが、相続税に注意が必要
役員借入金(社長個人から会社へ貸す)のケース
社長個人が会社にお金を貸すことは、非常によくあります。税務署としてはあまり問題にしないケースが多いです(ただし「まったく問題ない」とは言い切れません)。
融資審査においては、役員借入金は「返済不要の借入金」として扱われることが多く、実質的に自己資本・資本金と同じ性質のお金と見なされるため、プラスの評価になることが多いです。
📌 利息の計上について(役員借入金の場合)
社長個人に対して会社が利息を支払うことは経費になりますが、受け取った社長側では雑所得として所得税・住民税が課税されます。表と裏の関係になるため、節税目的で利息を計上してもほとんど意味がありません。利息の計上はしてもしなくても構いません。
役員借入金の最大の注意点:相続税の問題
役員借入金で最も気をつけなければならないのが相続税です。社長個人が会社にお金を貸している状態でお亡くなりになった場合、会社に残っているお金がなくても、「貸付金」という債権が個人財産として相続税の課税対象になります。
会社の業績が悪化して資金繰りが苦しく、個人のお金を会社に助けてもらった状態で、会社にお金が残っておらず返済もできないという場合であっても、相続税は課税されます。その納税資金を何とか工面しなければならないという事態が起こりえます。
⚠️ 注意
高齢の社長で会社にお金を貸しっぱなしになっている方は、相続税にも関わります。役員借入金の残高が多い場合は、相続対策の観点からも早めに専門家に相談することをお勧めします。
📝 このセクションのまとめ
- 役員借入金は融資審査上プラス評価になることが多い
- 利息の計上は任意だが、節税効果はほぼない
- 社長が貸しっぱなしのまま亡くなると、相続税の課税対象になる点に注意
役員貸付金(会社から社長個人へ貸す)の大前提:契約書と返済
ここからが今回のメインテーマです。会社から社長個人にお金を貸す「役員貸付金」の場合、まず大前提として金銭消費貸借契約書を必ず作成してください。通常、銀行からお金を借りるときに交わすような契約書のことです。
自分の会社と個人間の取引であっても、きちんと契約書を作成し、返済を着実に進めていくことが大切です。返済を続けていれば大きな問題は起こりません。
⚠️ 注意:絶対にやってはいけないこと
貸しっぱなし・私用で使いっぱなし・返済なしという状態は完全にアウトです。この状態が続くと、後述する2つの深刻なリスクが発生します。
認定利息の計上が必須
役員貸付金のもう一つの大前提として、市場金利に基づく認定利息の計上が必要です。法人が行うすべての活動は営利活動です。役員借入金のケースとは異なり、会社から社長個人へお金を貸す場合は、利息の計上が絶対に必要になります。
受取利息として法人側で収益認識をし、法人税などの課税対象となります。利率の目安は以下のとおりです。
| 状況 | 適用する利率 |
|---|---|
| 金融機関から実際に借り入れている場合 | その借入金利を適用 |
| 金融機関から借り入れていない場合 | 世間相場に合わせた年利(目安:年1%前後) |
📌 ポイント
認定利息の計上は細かい話に思えますが、税務調査で必ず確認されるポイントです。見落とさないよう注意しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 役員貸付金は必ず金銭消費貸借契約書を作成する
- 返済を着実に進めることが最重要
- 市場金利(目安:年1%前後)で認定利息を計上しないと税務調査で指摘される
役員貸付金の最大のデメリット①:役員賞与認定による税務リスク
返済がない場合、税務署は「これは貸付金ではなく、会社から社長にあげたお金(役員賞与)ではないか」と判断します。これが役員賞与認定という税務リスクです。
役員賞与は、事前の届け出がなければ経費計上しても損金(法人税の計算上の経費)として認められません。法人税の申告書で取り消し処理が必要になります。
また、役員賞与と認定された場合、それは個人の収益とみなされるため、次のような課税が発生します。
- 源泉徴収の対象になる
- 所得税が課税される
- 住民税も課税される
⚠️ 注意
年収が高い社長にとって、所得税と住民税の負担は非常に大きくなります。役員貸付金を貸しっぱなしにしておくことは、思わぬ高額課税につながる危険な行為です。
📝 このセクションのまとめ
- 返済のない役員貸付金は「役員賞与」と認定されるリスクがある
- 役員賞与は事前届け出なしでは損金不算入(法人税の経費にならない)
- 個人に対して源泉徴収・所得税・住民税が課税される
役員貸付金の最大のデメリット②:融資審査への悪影響(信用毀損リスク)
役員貸付金が返済されないまま残っていると、融資審査においても大きなデメリットが生じます。その仕組みを説明します。
役員貸付金は貸借対照表の「資産の部」に計上されます。しかし、貸しっぱなしの状態では「実態のない架空の資産」とみなされ、融資審査の場では資産から除外されます。
貸借対照表は左右(資産と負債・純資産)でバランスが一致していることが前提です。左側の資産が減らされると、その分だけ純資産(自己資本)が削られることになります。
| 影響の連鎖 | 内容 |
|---|---|
| ①役員貸付金が架空資産と判断される | 資産の部から除外される |
| ②資産が減少する | 純資産(自己資本)が削られる |
| ③自己資本比率が低下する | 融資審査の点数が下がる |
| ④融資審査が不利になる | 良い条件での借り入れが難しくなる |
⚠️ 注意
役員貸付金をそのままにしておくと、税務調査で指摘されるリスクがあるだけでなく、銀行から良い条件でお金を借りることすら難しくなります。会社の成長に必要な資金調達力を自ら損なうことになりかねません。
📝 このセクションのまとめ
- 役員貸付金は融資審査で「架空の資産」とみなされ、資産から除外される
- その結果、純資産が減少し、自己資本比率が低下する
- 融資審査の評価が下がり、良い条件での借り入れが困難になる
役員報酬の正しい設定方法:毎月の生活費不足を役員貸付金で補うのは間違い
社長個人にお金が必要になってしまう状況が緊急事態であればやむを得ない面もありますが、毎月の生活費が足りないという場合は、そもそも役員報酬の設定が間違っています。
役員報酬を適切に設定するためのステップは次のとおりです。
- 大原則の確認:手取り額で毎月の生活費をカバーできるかどうか、家計費の試算をしっかり行い、そこから役員報酬を決める
- 法人・個人のトータル税負担を考える:役員報酬を多く計上すると法人の利益が減り法人税の節税になる一方、個人の社会保険料・所得税・住民税の負担が増える。このバランスを考える
- 来期の経営計画を立てる:売上・経費・利益のざっくりとした計画を作成し、そのうちいくら役員報酬として取るかを数パターン試算する
- 法人・個人のトータル税額が最も低くなるパターンを選ぶ:税金の損得を重視する場合はこの方法で徹底する
📌 役員報酬の変更タイミングに注意
役員報酬は原則として決算終了後3ヶ月以内しか金額を変更できません。このタイミングを逃すと1年間は変更できないため、毎年の経営計画立案と合わせて検討することが重要です。
年収2,000万円前後が一つの目安
一般的に年収2,000万円前後になると、社会保険料・所得税・住民税のトータルの税負担が法人税とほぼ変わらなくなってきます。そのため、年収2,000万円前後で役員報酬を止めている方は非常に多いです。
もちろん、株式投資をしたい、生活水準を上げたいという方は、税負担を度外視して年収3,000万円・4,000万円・5,000万円・1億円以上を取るという選択をされる方もいます。
役員報酬を抑えて退職金で回収するパターン
もう一つの考え方として、役員報酬を低く抑えて内部留保をたくさん積み、財務体質を強化した上で、会社を辞めるときに役員退職金としてまとめて受け取るという方法もあります。いわゆる「マイクロ法人スキーム」を活用して社会保険料を低く抑えたい方がこのパターンを選ぶケースが多いです。
📌 ポイント:役員報酬の最適額に「正解」はない
役員報酬の最適額はケースバイケースです。会社の財務状況・個人の生活水準・個人としてどんな暮らしをしたいかによって大幅に変わります。以下の要素を総合的に判断することが重要です。
- 会社の財務状況と来期の経営計画
- 個人の生活水準と必要な手取り額
- 法人・個人のトータル税負担のバランス
- 将来的な退職金の活用を見据えた内部留保の方針
📝 このセクションのまとめ
- 毎月の生活費が不足するなら、役員報酬の設定を見直すべき
- 役員報酬の変更は決算後3ヶ月以内が原則
- 年収2,000万円前後が法人税と個人税負担の均衡点の目安
- 役員退職金を活用するマイクロ法人スキームも有効な選択肢
- 最適な役員報酬額は個々の状況によって異なるため、専門家への相談が有効
まとめ:役員貸付金と役員借入金の違いを押さえておこう
| 項目 | 役員借入金(社長→会社) | 役員貸付金(会社→社長) |
|---|---|---|
| 税務署の見方 | 比較的問題なし | 返済がなければ役員賞与と認定 |
| 利息の計上 | 任意(節税効果はほぼなし) | 必須(年1%前後が目安) |
| 融資審査への影響 | 自己資本と同等評価でプラス | 架空資産とみなされ純資産が減少 |
| 相続税への影響 | 個人財産として課税対象になる | なし |
| 契約書 | 作成推奨 | 作成必須 |
役員借入金については相続財産になるという点以外は大きな問題はありません。一方、役員貸付金(会社から社長個人へのお金の貸し付け)には、税務リスク(役員賞与認定・所得税住民税の課税)と信用毀損リスク(融資審査の評価低下)という2つの大きなデメリットがあります。
なるべく役員貸付金が帳簿上に残らないような経理処理を心がけ、もし発生してしまった場合は速やかに返済を進めることが重要です。
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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