超過累進税率の勘違いを税理士が解説|課税所得1000万の税負担は実は17.6%
「課税所得が900万円を超えると税負担が急増する」という話を聞いたことはありませんか?実はこれ、超過累進税率の大きな勘違いです。正しい仕組みを知れば、稼ぎを抑える必要がないことがわかります。
テレビ・メディアでも流れている「よくある誤解」
確定申告のシーズンになると、所得税の話題があちこちで取り上げられます。しかし、税理士の立場からすると、テレビ番組やメディアで誤った情報が流されているケースが非常に多いのが現状です。
その代表例がこちらです。
⚠️ 注意
「課税所得1,000万円の人は所得税率33%なので、所得税は330万円。さらに住民税10%を合わせると税率43%にもなる」——これは完全な誤りです。
個人が支払う税金の中で最も大きな所得税について、これほど多くの人が誤解しているのは問題です。世の中のほぼすべての人が例外なく払っている所得税だからこそ、正しい仕組みをしっかり押さえておきましょう。
今日の結論をひとことで言うと——
📌 ポイント
所得税の超過累進税率は、確かに一定のラインを超えると税率が急激に上がります。しかし、税負担そのものが急激に増えるわけではありません。
📝 このセクションのまとめ
- メディアで「課税所得1,000万円=税率33%=税金330万円」という誤情報が流れている
- 住民税を合わせて「税率43%」という報道も誤り
- 超過累進税率の正しい仕組みを理解することが重要
所得税の計算の流れをおさらい
超過累進税率の話に入る前に、所得税がどのように計算されるかを整理しておきましょう。
会社員の場合の計算フローは以下のとおりです。
- 年間給与(額面・年収)からスタート
- 給与所得控除(概算経費のようなもの)を差し引く → 給与所得が算出される
- さらに所得控除(医療費控除・配偶者控除・生命保険料控除など)を差し引く → 課税所得が算出される
- 課税所得に超過累進税率(5%〜45%)を当てはめて所得税を計算する
- 住宅ローン控除などの税額控除がある場合は差し引く → 所得税額が確定する
なお、こうして計算した所得税には復興特別所得税(税額の2.1%)が上乗せされます。さらに、似たような計算で算出される住民税が一律10%かかります。
個人事業主・フリーランスの場合も基本的な流れは同じです。
| 項目 | 会社員 | 個人事業主・フリーランス |
|---|---|---|
| 収入のスタート | 年間給与(額面) | 売上 |
| 収入から引くもの① | 給与所得控除(概算経費) | 必要経費(実額) |
| 差し引き後の所得 | 給与所得 | 事業所得・不動産所得など |
| 収入から引くもの② | 所得控除(共通) | 所得控除(共通) |
| 税率を掛ける対象 | 課税所得 | 課税所得 |
確定申告は、この計算結果を基本的に2枚の申告書に記載していく作業です。個人事業主の場合は別途決算書を作成し、申告書に添付して提出します。
📝 このセクションのまとめ
- 所得税は「年収→所得→課税所得」の順に控除を引いて計算する
- 超過累進税率を掛けるのは「課税所得」に対してであり、年収そのものではない
- 会社員も個人事業主も、課税所得に税率を当てはめる流れは同じ
超過累進税率とは?階層ごとに税率が変わる仕組み
所得税の税率は、課税所得の金額に応じて以下のように定められています。
| 課税所得の範囲 | 所得税率 |
|---|---|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% |
| 4,000万円超 | 45% |
ここで重要なのが「超過累進」という言葉の意味です。各税率は、その階層に該当する部分の金額にのみ適用されます。課税所得全体に最高税率が適用されるわけではありません。
📌 ポイント
課税所得が900万円を1円でも超えると、その超えた部分だけが33%になります。900万円以下の部分は従来どおりの低い税率のままです。900万円のラインを1万円超えただけで税負担が急激に増えることはありません。
これを図解すると、課税所得の積み上がりに応じて税率が階段状に上がっていくイメージです。住民税(一律10%)を加えた場合の合計税率は、最低15%(所得税5%+住民税10%)、最高55%(所得税45%+住民税10%)となります。
年収100万円の人も年収1億円の人も、課税所得195万円までの部分に対する税率は同じ15%(所得税5%+住民税10%)です。
📝 このセクションのまとめ
- 所得税率は課税所得の「各階層に該当する部分」にのみ適用される
- 課税所得が一定ラインを超えても、超えた部分だけが高い税率になる
- 住民税込みの最低税率は15%、最高税率は55%
実際に計算してみる|課税所得1,000万円の場合
では、課税所得1,000万円の場合に実際の所得税を計算してみましょう。誤った計算と正しい計算を比べます。
⚠️ 誤った計算(よくある勘違い)
課税所得1,000万円 × 税率33% = 330万円(← これは間違い)
正しくは、各階層ごとに分けて計算し、合算します。
| 課税所得の範囲 | 対象金額 | 税率 | 税額 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下の部分 | 195万円 | 5% | 97,500円 |
| 195万円超〜330万円の部分 | 135万円(330万−195万) | 10% | 135,000円 |
| 330万円超〜695万円の部分 | 365万円(695万−330万) | 20% | 730,000円 |
| 695万円超〜900万円の部分 | 205万円(900万−695万) | 23% | 471,500円 |
| 900万円超〜1,000万円の部分 | 100万円(1,000万−900万) | 33% | 330,000円 |
| 合計(所得税額) | 1,764,000円 | ||
正しく計算すると、課税所得1,000万円の所得税は176万4,000円です。これは課税所得に対する実際の税負担率としてわずか17.6%にとどまります。
📌 ポイント
誤った計算では330万円(税率33%)、正しい計算では176万4,000円(実効税率17.6%)。これは33%の約半分の負担です。住民税を加えても税率は28%程度であり、「税金だけで43%」には到底なりません。確かに日本の税負担は軽くはありませんが、そこまで高くはないのです。
📝 このセクションのまとめ
- 課税所得1,000万円の所得税は176万4,000円(実効税率17.6%)
- 「1,000万円×33%=330万円」という計算は完全な誤り
- 住民税を加えても税率は28%程度であり、「43%」にはならない
「900万円を超えないように抑えたほうがいい」は本当か?
税理士として20年以上の経験の中で、よく聞かれる質問があります。
「課税所得が900万円のラインを超えると税率が23%から33%へ一気に10%上がりますよね。だから課税所得を900万円以内に抑えておいたほうがいいんですよね?」
これに対する答えは、「全然そんなことはない」です。
確かに税率は10%上がります。しかしあくまでも900万円を超えた部分だけが33%になるのです。900万円のラインを1万円超えただけであれば、その1万円に対して10%多く課税されるだけ——つまり追加の税負担は1,000円にすぎません。
⚠️ 注意
「課税所得900万円のラインを超えないように稼ぎを抑える」という考え方は、税負担の仕組みを誤解した、非常にもったいない行動です。税率のラインを気にして収入を意図的に減らすことは、節税どころか損失につながります。
本当に税負担が重くなる転換点は、所得税率だけで見ると課税所得1億円前後のレベルの話です。一般的な自営業者や経営者の方が気にするような水準ではありません。
📝 このセクションのまとめ
- 課税所得900万円を1万円超えた場合の追加税負担は1,000円のみ
- 税率のラインを気にして稼ぎを抑えることは損
- 税負担が本当に重くなるのは課税所得1億円超の水準
速算表の正しい読み方|「控除額」は何を意味するのか
税理士が日常的に使う超過累進税率の速算表を見たことがある方も多いと思います。この速算表こそが、多くの人の勘違いの原因になっていると考えられます。
速算表は、先ほどのような階層ごとの面倒な計算をせずに、スピーディーに税額を計算できる便利な一覧表です。
| 課税所得の範囲 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
速算表を使った計算式は「課税所得 × 税率 − 控除額 = 所得税額」です。課税所得1,000万円の場合で確認してみましょう。
1,000万円 × 33% − 153万6,000円 = 176万4,000円
先ほどの階層ごとの計算結果と一致します。では、この「控除額」とは何でしょうか?所得控除のように特別に引いてもらえるものでしょうか?
📌 ポイント:速算表の「控除額」の正体
速算表の控除額は、「課税所得全体に高い税率をかけた場合の取りすぎ分を調整するための数字」です。特別に引いてもらえる優遇措置ではありません。
例えば課税所得330万円の場合、330万円全体に10%をかけると計算が簡単になりますが、195万円以下の部分は本来5%で良かったはずです。その「取りすぎた分(195万円 × 5%)= 97,500円」を引き戻しているのが控除額の正体です。
つまり速算表は以下のような仕組みです。
- 課税所得全体に、その階層の税率をドーンとかける(計算を簡略化)
- 低い階層に対して取りすぎた税額分を「控除額」として引き戻す
- 結果として、階層ごとに細かく計算した場合と全く同じ税額が出る
速算表の「税率」だけを見て「課税所得 × 税率 = 所得税」と計算してしまうと、実際より大幅に高い金額が出てしまいます。必ず「控除額を引く」ステップとセットで使うことが重要です。
📝 このセクションのまとめ
- 速算表は「課税所得 × 税率 − 控除額」で瞬時に税額を計算できる便利な表
- 速算表の「控除額」は特別な優遇ではなく、取りすぎた税額の調整分
- 「税率だけを見て計算する」という誤用が勘違いの大きな原因になっている
節税より先に「稼ぐこと」を優先すべき理由
税理士として20年以上、多くの自営業者・経営者と向き合ってきた中で感じることがあります。それは、節税が目的になってしまっている方が少なくない、ということです。
もちろん、扶養に入れる範囲で働くかどうかを検討することは必要な場面もあります。しかし、特に自営業や会社経営をされている方にとって、節税は手段であって目的ではありません。
- 稼ぐことができれば、税金を差し引いてもプラスになる
- 稼いだ上で節税を考えれば、手元に残るお金はさらに増える
- 税率のラインを気にして収入を抑えることは、純粋な損失につながる
超過累進税率の仕組みを正しく理解すれば、「稼げば稼ぐほどそれ以上に税金を取られる」ということはないとわかります。まずはガンガン稼ぐ、そして儲かったら節税を考える——この順番が正しいあり方です。
本当に税負担が重くなる転換点は、課税所得1億円以上の話です。多くの方が気にする900万円や1,800万円のラインで収入を抑える必要はまったくありません。税率のことはあまり気にせず、本業にガンガン突き進んでいただきたいと思います。
📌 ポイント
超過累進税率の正しい理解を持てば、「税率のラインを超えないように稼ぎを抑える」という考え方がいかにもったいないかがわかります。稼ぐが勝ち——まず稼ぐことを優先し、その後で節税を考えましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 節税は手段であり、目的にしてはいけない
- 稼いだ分を超えて税金が取られることはない
- まず稼ぐ、次に節税を考えるという順番が正しい
- 税負担が本当に重くなるのは課税所得1億円超の水準
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
関連記事
特定口座・源泉徴収ありでも確定申告すべきケース3選を税理士が解説
給与所得控除見直しで所得税・住民税が爆増?税理士が解説するサラリーマン増税の真相
会計ソフト不要!スマホだけで確定申告を完結する方法を税理士が解説
東京エリア
千代田・中央・港区から副都心各区まで、東京の優良税理士法人ランキング
関西エリア
大阪・京都・兵庫・岡山など関西圏の信頼できる税理士法人ランキング
関東エリア
首都圏の神奈川・埼玉・千葉・北関東で実績のある税理士法人ランキング
中部エリア
製造業の集積地、中部・北陸圏で企業支援に強い税理士法人ランキング
九州・沖縄
九州・沖縄地域で地域密着型サービスに定評のある税理士法人ランキング
その他地域
北海道・東北・中国・四国地方の地域に根ざした税理士法人ランキング
