個人事業主が会社を作らない方がいい10の理由を税理士が解説
「会社を作った方がいい」は本当に正しいのか?公認会計士が個人事業主・フリーランスに向けて、会社を設立しない方がいい10の理由を本音で解説します。
なぜ今「会社設立」が注目されているのか
個人事業主やフリーランスの方が会社(法人)を作りたいと考える理由は、大きく分けていくつかあります。
- 本気でビジネスをしたい、社長という肩書きへの憧れ
- 「法人税の方が安い」という噂を聞いた
- インボイス制度が始まり、売上1,000万円以下の方が登録すべきか悩んでいる
- 「だったら会社にして売上1,000万円以上を目指せばインボイス登録一択で悩まなくて済む」という発想
税理士など周りの専門家も「会社を作った方が絶対いいよ」とすすめることが多いですが、果たしてそれは本当でしょうか。もしかしたら専門家のその発言には裏があるかもしれません。
今回は、会社を作りたいと相談に来た方に対して、会計士が「会社を作らない方がいい理由」を10個ぶつけていきます。それでも作りたいという情熱がある人こそ、本当に会社を作るべきだと思うからです。
📌 ポイント
デメリットをすべて理解した上でなお「やりたい」という情熱がある人が、会社を作るべきです。専門家に言われるがまま設立するのは危険です。
📝 このセクションのまとめ
- 会社設立への動機は「節税」「インボイス対策」「ブランド力」など様々
- 専門家がすすめる背景には、必ずしも依頼者の利益だけがあるわけではない
- デメリットを理解した上で判断することが重要
理由① 法人税は意外と安くない
「法人税の方が安い」という話はよく聞きますが、実際のところはその人の所得によります。まず税率を整理しましょう。
| 区分 | 税率の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 法人税(法人の所得) | 22〜35% | 所得=収入-経費 |
| 所得税+住民税(個人) | 最大55%(所得税45%+住民税10%) | 所得4,000万円超の場合 |
| 所得税+住民税(個人・低所得帯) | 15%(所得税5%+住民税10%) | 195万円以下の部分 |
所得が4,500万円ある人の場合、個人だと最大55%の税率がかかるところ、法人にすると35%まで下がります。約1/3の削減効果があり、これは大きいです。
ただし、これはあくまで所得が高い人の話です。一般的な方は、経費などを引いた所得が900万円以下に収まるケースが多く、その場合は個人でも33%程度、法人にしても25〜33%程度と、そこまで大きな差が出ません。
さらに、個人事業主の場合は青色申告をすると65万円の特別控除が受けられ、経費を65万円分多く計上できます。法人にはこの控除がないため、その点では個人の方が有利になることもあります。
⚠️ 注意
「法人税の方が安い」は所得が高い人には当てはまりますが、所得が900万円以下の方は法人化してもほとんど税率が変わらない場合があります。収入・経費の状況をしっかり確認してから判断しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 法人税は22〜35%、個人の所得税+住民税は最大55%
- 所得が高い人ほど法人化の節税メリットが大きい
- 所得900万円以下なら個人と法人でほぼ差がない場合も多い
- 個人の青色申告65万円控除は法人には存在しない
理由②③ 銀行口座の開設と登記が意外と大変
会社を作っても、銀行口座が作れなければ意味がありません。個人であれば銀行の窓口に行けば1円から口座を作れますが、法人口座は会社の信用・実績がないと門前払いになるケースがあります。
特に芸能人など、一般的な事業実績が見えにくい職種の方は法人口座の開設が難しいことが多いです。実際の流れとしては、まずメガバンクで断られ、次にネットバンクでも断られ、最終的に信用金庫などの地域の金融機関でようやく作れる、というケースもあります。所属事務所のメインバンクに話をつないでもらうという方法も現実的な選択肢の一つです。
📌 ポイント
銀行口座を開設するには、会社の事業内容をしっかり説明できることが必要です。「ふわっとした事業内容」では反社チェックなどを理由に断られるケースがあります。具体的な事業計画(例:YouTubeのメンバーシップで年間1万人×1,000円=1,000万円の収益計画)を準備しましょう。
次に登記の問題があります。会社設立時の登記だけでなく、役員の任期ごとに重任登記が必要です。役員の任期は最短2年、最長10年で、任期が切れるたびに登記をやり直さなければなりません。
⚠️ 注意
重任登記を忘れると罰金(過料)が発生します。実際に登記を忘れて5万円程度の罰金を払ったケースもあります。登記の期限管理は必ず行いましょう。
また、法人登記では社長(代表者)の住所が登記簿に記載されるため、誰でも閲覧できる状態になります。自宅住所を公開したくない場合は、バーチャルオフィスの利用など別途対策が必要です。
📝 このセクションのまとめ
- 法人口座は信用・実績がないと開設できないケースがある
- メガバンク→ネットバンク→信用金庫の順に当たるのが現実的
- 役員任期ごとの重任登記を忘れると罰金(約5万円)が発生する
- 代表者の住所は登記簿で公開されるため、住所対策が必要
理由④⑤ 株主トラブルと社会保険の負担増
自分一人で出資して自分が社長であれば問題ありませんが、複数人で出資して会社を作ると株主間のトラブルが起きやすくなります。お金が絡むと人間関係がおかしくなることは珍しくありません。
特に注意が必要なのが、会社が成功した時です。最初に100万円ずつ出し合ったとしても、会社が成長して株価が5,000万円になった場合、抜けようとすると「5,000万円払わないと抜けられない」という状況になりかねません。仲の良い友人同士で始めたお店や会社が、成功した途端に揉めるというのはよくある話です。
⚠️ 注意
「仲の良い友人と一緒に出資して会社を作る」「みんなで出し合って会社を作って出版しよう」といった話は要注意です。成功すればするほど株主間の利害が対立し、深刻なトラブルに発展するリスクがあります。
次に社会保険の負担です。従業員を雇うと、その従業員分の社会保険料を会社と従業員で折半しなければなりません。従業員が増えるほど会社の社会保険負担は重くなります。
さらに、社会保険だけでなく雇用保険(労働保険)の手続きも必要になります。ハローワークや労働基準監督署への手続き、労働時間の管理(出退勤の記録)なども求められます。
📌 ポイント
社会保険・労務管理は社会保険労務士に依頼することも可能ですが、社長として最低限の管理責任は必要です。その分のコストも増加します。
📝 このセクションのまとめ
- 複数人での出資・設立は株主間トラブルのリスクがある
- 会社が成功するほど株主間の利害対立が深刻になりやすい
- 従業員を雇うと社会保険料を会社が半額負担しなければならない
- 雇用保険・労働時間管理など労務管理の義務も発生する
理由⑥⑦ 源泉徴収の事務負担と役員報酬の制限
個人事業主の立場では、所属事務所などが源泉徴収を代わりに行ってくれるため、確定申告で還付を受けるという「受け取り側」の立場です。しかし会社を作ると、今度は自分が源泉徴収を行う「引く側」になります。
具体的には、会社が個人(芸人や外注スタッフなど)にギャラを支払う際に、10.21%を源泉徴収して税務署に納付しなければなりません。これを毎月行う必要があります。
| 支払いの種類 | 源泉徴収の要否 |
|---|---|
| 会社から個人(芸人・外注等)への支払い | 必要(10.21%) |
| 会社から会社への支払い | 不要 |
| 会社から社員(給与)への支払い | 必要 |
| 会社から代表役員(自分)への報酬 | 必要 |
自分で会社を作り、自分が代表役員であっても、自分への報酬から源泉徴収を行い税務署に納付しなければなりません。源泉徴収を怠ると会社がペナルティを受けます。これらの事務作業を担う経理担当者、あるいは税理士への依頼が実質的に必要になります。
⚠️ 注意
源泉徴収を正しく行わなかった場合、会社がペナルティ(不納付加算税など)を受けます。「知らなかった」では済まされないため、必ず正確な事務処理が必要です。
次に役員報酬(自分の給料)の制限です。会社を作ると自分の給料を自由に設定できると思いがちですが、実は大きな制約があります。
📌 ポイント:役員報酬のルール
- 役員報酬(社長・役員・みなし役員となる家族等を含む)は年に1回しか変更できない
- 決めた金額を1年間は動かせない
- ボーナスを払う場合は事前に税務署へ届け出が必要
- これを守らないと、支払った報酬が経費として認められない
これは、社長が利益を自由に操作できないようにするためのルールです。急に仕事が減っても、急にお金が必要になっても、1年間は報酬額を変えられないという点は、個人事業主に比べて大きな不自由さです。
📝 このセクションのまとめ
- 会社は個人へのギャラ支払い時に源泉徴収(10.21%)を毎月行う義務がある
- 自分(代表役員)への報酬も源泉徴収が必要
- 役員報酬は年1回しか変更できず、ボーナスは事前届け出が必要
- これらのルールを守らないと経費不算入・ペナルティのリスクがある
理由⑧⑨ 税務調査の確率増加と節税保険の効果低下
会社にすると税務調査が来る確率(実調率)が上がります。
| 区分 | 実調率(税務調査が来る確率) | 調査の日数 |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 約1%(100年に1回程度) | 1日 |
| 法人(会社) | 約3%(30年に1回程度) | 2日間 |
法人は個人の3倍の確率で税務調査が来ます。30年間会社を続ければ、ほぼ確実に1回は税務調査を受けることになります。また、法人の税務調査は2日間スケジュールを確保する必要があり、スタッフへの対応も含めて個人より負担が大きくなります。
税理士に依頼していれば、初日の午前中と2日目の最後だけ立ち会えばよいといった交渉も可能ですが、それでもスケジュール調整は必要です。悪質でなければ一般の調査官が来るだけですので、過度に恐れる必要はありませんが、確率が上がること自体は認識しておきましょう。
次に節税保険の効果についてです。かつては「会社を作って保険に加入すれば税金を安くできる」という手法が流行しましたが、現在は国税庁による規制が強化されています。
- 以前は保険料を払った分だけ税金が安くなり、解約時に全額戻ってくる商品があった
- 現在は規制が入り、保険料100を払っても85しか戻ってこないケースが多い
- 節税効果が大幅に薄れており、保険のために会社を作るメリットはほぼない
⚠️ 注意
顧問税理士が保険を販売している場合、大したメリットのない保険を売り付けられるリスクがあります。「節税保険」を勧められたら、現在の規制内容を確認した上で慎重に判断しましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 法人の税務調査確率は個人の3倍(約3%)、調査は2日間
- 30年間会社を続ければほぼ確実に1回は調査が来る
- 節税保険は規制強化により現在はほぼメリットがない
- 保険を勧める税理士には注意が必要
理由⑩ 税理士報酬が大幅に上がる
会社を作ると、税理士への報酬(顧問料)が大幅に増加します。これは非常に重要なコストです。
| 区分 | 税理士報酬の目安(年間) | 確定申告書類の枚数 |
|---|---|---|
| 個人事業主(芸能人等) | 20〜40万円程度 | 5〜10枚程度 |
| 法人(会社) | 60〜120万円程度(約3倍) | 約450枚 |
個人の確定申告書類は5〜10枚程度ですが、法人が税務署に提出する書類は通常450枚前後になります。源泉徴収の処理も加わるため、税理士側の作業量が大幅に増え、それが報酬に反映されます。
例えば、売上がすべて所属事務所からの入金のみ(取引先が1社)という場合はシンプルなので比較的安くなりますが、YouTubeなど複数の収入源が加わると、その分処理が複雑になり報酬も上がります。
⚠️ 注意
税理士報酬を上げたいがために、顧客に会社設立をすすめる税理士が存在しないとは言い切れません。「会社を作った方がいい」と言われたら、その理由を具体的に確認するようにしましょう。
📝 このセクションのまとめ
- 法人の税理士報酬は個人の約3倍(年間60〜120万円程度)
- 法人の税務書類は約450枚と個人より大幅に多い
- 税理士報酬の増加分を考慮すると、法人化のメリットが薄れることもある
会社を作らない方がいい10の理由まとめ
ここまでの内容を一覧で整理します。
| No. | デメリット | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 法人税は意外と安くない | 所得900万円以下なら個人と大差なし |
| ② | 銀行口座の開設が大変 | 信用・実績がないと門前払いも |
| ③ | 登記が大変 | 重任登記忘れで罰金・住所公開の問題も |
| ④ | 株主との関係がトラブルに発展しやすい | 成功するほど揉めやすくなる |
| ⑤ | 社会保険・労務管理が大変 | 従業員の社会保険を会社が半額負担 |
| ⑥ | 源泉徴収の事務負担が増える | 毎月の納付・経理処理が必要 |
| ⑦ | 自分の給料・ボーナスを自由に払えない | 役員報酬は年1回しか変更不可 |
| ⑧ | 税務調査の確率が3倍に上がる | 2日間のスケジュール確保が必要 |
| ⑨ | 節税保険の効果が大したことない | 規制強化で100払っても85しか戻らない |
| ⑩ | 税理士報酬が約3倍に跳ね上がる | 年間60〜120万円程度が目安 |
📝 このセクションのまとめ
- デメリットは税務・資金・労務・人間関係と多岐にわたる
- 「節税のためだけ」に会社を作るのは現在ではほぼメリットがない
- それでも作りたいという強い意志がある人こそ、会社を作るべき
それでも会社を作る最大のメリットは「信用力」
デメリットを10個挙げてきましたが、それでも会社を作る最大のメリットがあります。それは「信用力」です。
トヨタもNTTも、大企業から中小企業まで同じ「株式会社」という形態が使えます。個人事業主ではなく株式会社として活動することで、取引先・銀行・採用候補者など、あらゆる相手からの信用が高まります。
- 「この仕事を一緒にやろう」という声がかかりやすくなる
- 「ここで働きたい」という人材が集まりやすくなる
- 会社と会社の取引として、お互いに責任を持った関係が築ける
個人として呼ばれるイベントへの出演と、会社として共同でイベントを作るのとでは、求められる信用の質が異なります。大きなビジネスをしたい場合には、やはり会社という形態が必要になってきます。
📌 会社設立のメリット(信用力以外)
- 資金調達力の向上:銀行からの融資を受けやすくなる
- 補助金の活用:法人向けの補助金・助成金を利用できる
- 出資を受けられる:株式を売ることで投資家から資金を集められる
ただし、会社をやめたばかりの方や、これから独立する方は、いきなり会社を設立するのではなく、まず個人事業主としてスタートし、ある程度収入・経費の予測が立ってから法人化するという流れが現実的です。
会社を作るということは、社長・株主として「何もしない」わけにはいかなくなります。申告書類の管理、役員報酬の決定、登記の更新……これらを「自分が責任を持ってやる」という覚悟が、会社設立の大前提です。
📝 このセクションのまとめ
- 会社設立の最大メリットは「信用力」であり、節税額よりも重要
- 大きなビジネスをしたい人・信用を武器にしたい人には会社が必要
- まず個人事業主でスタートし、収益が安定してから法人化するのが現実的
- 会社を作るには「自己責任で管理する」という覚悟が必須
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル オタク会計士ch【山田真哉】 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。 本サイトは オタク会計士ch【山田真哉】を応援しています!
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