給与所得控除見直しで所得税・住民税が爆増?税理士が解説するサラリーマン増税の真相
給与所得控除が3%に引き下げられたら、年収400万円の会社員で年間約28万円の増税になる可能性があります。
増税ラッシュの中で次のターゲットは会社員?
インボイス制度のスタート、生前贈与加算期間の延長、タワマン税制などの相続税増税、扶養控除の縮小議論など、さまざまな増税が相次いで議論されています。現在の日本経済は原材料高騰・エネルギー価格の上昇・円安が重なり、家計に余裕がない状況が続いています。
そんな中、次なる増税のターゲットとして浮上しているのが、全国で約6,000万人いる会社員です。個人事業主や会社経営者がインボイス制度で大変な思いをしているように、今度は会社員に目が向けられようとしています。
今回取り上げるのは「給与所得控除の見直し案」です。会社員独自の概算経費であるこの控除が「高すぎる」として、引き下げが議論されています。現時点ではまだ確定ではありませんが、議論の方向性を早めに把握しておくことが重要です。なお、この話題は会社員だけでなく、役員報酬を受け取っている会社経営者の方にも関係します。
📌 ポイント
「サラリーマン版インボイス」という言葉がメディアで使われていますが、今回の給与所得控除の見直し案はインボイス制度(消費税)とは一切関係ありません。インボイスで恩恵を受けていた自営業と、手厚い給与所得控除を受けてきた会社員を並べて表現したネーミングにすぎません。
📝 このセクションのまとめ
- インボイス・相続税・扶養控除に続き、会社員の給与所得控除が次の増税議論の対象になっている
- 対象は全国約6,000万人の会社員および役員報酬を受け取る経営者
- 「サラリーマン版インボイス」はあくまで通称であり、インボイス制度(消費税)とは無関係
所得税・住民税の計算の仕組みをおさらい
給与所得控除の話に入る前に、個人が払う所得税・住民税がどのように計算されるかを整理しておきましょう。
個人事業主・個人の大家さんの場合は、1年間の収入(売上)からそれを稼ぐためにかかった必要経費を引いて利益(事業所得・不動産所得など)を算出します。そこからさらに所得控除(配偶者控除・扶養控除・医療費控除・生命保険料控除など、個人の生活事情を考慮した控除)を引いた課税所得に対して、所得税の税率をかけます。
所得税は超過累進税率で、儲けが大きくなるほど税率も上がる仕組みです。最低5%から最大45%まであります。さらに住民税が10%、所得税に対して2.1%の復興特別所得税が上乗せされ、所得金額が年間290万円を超える場合は事業税もかかります。
会社員の場合は、売上の代わりに給与の額面収入が起点になります。ここから引くのが経費ではなく「給与所得控除」です。これを引いて「給与所得」を算定し、その後の所得控除・課税所得・税率の計算は個人事業主と同じ流れです。住民税も同様にかかりますが、事業税はかかりません。
📌 ポイント:「給与所得控除」と「所得控除」は全く別物
「給与所得控除」は給与収入から給与所得を計算する際に引く概算経費です。一方「所得控除」は配偶者控除・医療費控除などの個人事情を考慮した控除です。名前が似ていますが、計算上の位置づけが全く異なります。混同しないよう注意してください。
📝 このセクションのまとめ
- 所得税は超過累進税率(5%〜45%)、住民税は一律10%、復興特別所得税は所得税の2.1%
- 会社員は「給与所得控除」で概算経費が認められ、事業税はかからない
- 「給与所得控除」と「所得控除」は別の制度なので混同しないこと
現行の給与所得控除の仕組みと金額
会社員がサラリーを得るためにかかった経費を個別に集計するのは、どこまでが経費になるか線引きが非常に難しいため、国は給与額面収入に応じた経費額をあらかじめ決めています。これが給与所得控除です。
なお、給与収入金額には、社会保険料や所得税の源泉徴収などを引く前の額面収入を使います。非課税の通勤手当は除外して計算します。
| 給与収入金額 | 給与所得控除額の計算式 | 年収400万・500万の場合 |
|---|---|---|
| 162.5万円以下 | 一律 55万円 | — |
| 162.5万円超〜180万円以下 | 収入×40%-10万円 | — |
| 180万円超〜360万円以下 | 収入×30%+8万円 | — |
| 360万円超〜660万円以下 | 収入×20%+44万円 | 400万円→124万円、500万円→144万円 |
| 660万円超〜850万円以下 | 収入×10%+110万円 | — |
| 850万円超 | 上限 195万円(頭打ち) | — |
例えば年収400万円であれば給与所得控除は124万円、年収500万円であれば144万円となります。これは給与額面収入の約30%に相当する大きな控除です。
かつては上限が200万円を超えていたり、収入が高くなるほど控除も青天井で増えていた時代もありましたが、時代とともに改正が進み、現在は上限が195万円に設定されています。
なお、会社員がスーツ代などを経費として申告できる「特定支出控除」という制度もありますが、条件が非常に厳しく手続きも煩雑なため、実際に活用している方はほとんどいません。
📝 このセクションのまとめ
- 給与所得控除は給与収入の約30%が目安で、年収400万円なら124万円、500万円なら144万円
- 上限は現在195万円(年収850万円超で頭打ち)
- 特定支出控除は条件が厳しく、実際に使える人はごく少数
税制調査会が問題視する「約30%控除」の根拠
今回の見直し議論のソースは、税制調査会の会議資料(2023年6月30日公表)です。その資料の95ページには以下のように記載されています。
⚠️ 税制調査会資料(2023年6月30日)より抜粋
「給与所得控除により、マクロ的には給与収入総額の3割程度が控除されていますが、給与所得者の必要経費と指摘される支出は給与収入の約3%程度と試算されており、主要国との比較においても全体的に高い水準となっているなど、勤務費用の概算控除としては相当手厚い仕組みとなっています。」
つまり、現行制度では給与収入の約30%が控除として認められているにもかかわらず、実態として会社員が仕事のために支出している経費は給与収入の約3%程度にすぎないと試算されている、ということです。この乖離が「控除が高すぎる」という議論の根拠になっています。
📝 このセクションのまとめ
- 税制調査会の資料では、現行の約30%控除に対して実態の経費は約3%と試算されていると記載
- 主要国との比較でも日本の給与所得控除は高い水準とされている
- この乖離が「見直し」議論の根拠になっている
もし控除が3%に引き下げられたら税負担はどう変わるか
万が一、給与所得控除が一律3%に引き下げられた場合、税負担はどれほど増えるのでしょうか。具体的な数字で見てみましょう。
| 年収 | 現行の給与所得控除 | 3%に引き下げた場合の控除 | 増税額(所得税+住民税) |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 98万円 | 約9万円 | 年間約18万円増 |
| 400万円 | 124万円 | 約12万円 | 年間約28万円増 |
| 500万円 | 144万円 | 約15万円 | — |
| 600万円 | 164万円 | 約18万円 | 年間約44万円増(月約4万円) |
年収400万円の場合、現行では124万円あった控除が約12万円に激減します。年収600万円では年間約44万円、月にして約4万円近くもの負担増になります。
⚠️ 注意
年収300万〜400万円という、決して生活に余裕があるとは言えない層でも、年間18万〜28万円もの増税になる計算です。これは家計への深刻な打撃となりえます。
📝 このセクションのまとめ
- 控除が3%になると、年収400万円で年間約28万円、年収600万円で約44万円の増税
- 年収600万円では月約4万円の負担増になる計算
- 年収300万〜400万円の層でも年間18万〜28万円の増税となり、生活への影響は深刻
個人事業主と会社員、どちらが税制上有利か
「約30%の控除が高すぎる」という議論は、主に諸外国との比較に基づくものです。しかし、日本国内で個人事業主と会社員を比較したとき、会社員の給与所得控除が「手厚すぎる」とは言い切れません。
個人事業主や会社経営者が経費として落とせる範囲は非常に広いです。
- 車の取得費用(減価償却)・ガソリン代・車両保険
- 仕事で使う携帯電話代・ノートパソコン代
- 自宅家賃の一部(仕事に使っている割合を按分)
- 青色申告特別控除(最大65万円)
- 家族従業員への給与(青色事業専従者給与)
- 小規模企業共済(退職金積立しながら経費計上)
一方、会社員は毎月の給与から自動的に税金が源泉徴収され、通常は年末調整で精算が完結します。確定申告なしで済む反面、節税の手段がほとんどないのが会社員の実情です。
確かに海外と比べれば日本の給与所得控除には厚みがありますが、一国内で見たときに会社員が税制上で優遇されているとは言い難い状況です。税理士の立場から客観的に見ても、給与所得控除が手厚すぎるとは思えません。
📌 ポイント
個人事業主は車・家賃・通信費など幅広い経費を計上できますが、会社員は毎月自動的に税金を天引きされ、節税手段がほぼありません。「給与所得控除が高すぎる」という議論は、国内の実態よりも海外比較を根拠にしている点に注意が必要です。
📝 このセクションのまとめ
- 個人事業主は車・家賃・通信費・青色申告特別控除など、幅広い経費・節税手段がある
- 会社員は源泉徴収・年末調整で自動精算される反面、節税の余地がほとんどない
- 国内で見た場合、会社員の給与所得控除が「手厚すぎる」とは言い難い
- 見直し議論の根拠は主に海外との比較であり、国内の実態とは乖離がある
まとめ:正しい知識で増税に備えよう
今回の給与所得控除の見直し案は、税制調査会の資料にすでに明記されている内容であり、今後の税制改正の方向性として注目すべき動きです。現時点では確定していませんが、議論が進んでいることは事実です。
「よくわからないまま増税されていた」という事態を避けるためにも、制度の仕組みと影響額を正しく理解しておくことが大切です。給与所得控除が引き下げられれば、所得税・住民税の両方が増加し、手取りが大幅に減少します。
📌 今回の要点まとめ
- 給与所得控除の見直し案が税制調査会で浮上しており、現行の約30%から3%への引き下げが議論されている
- 3%に引き下げられると年収400万円で年間約28万円、年収600万円で約44万円の増税になる可能性がある
- 「サラリーマン版インボイス」という呼称はあくまで通称で、インボイス制度(消費税)とは無関係
- 現時点では未確定だが、今後の税制改正の動向を引き続き注視する必要がある
終わりに
本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士 の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。本サイトは 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士を応援しています!
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