税理士の顧問料、月額と年額どちらがお得?


個人事業主として開業して3年目になるのですが、そろそろ税理士さんにお願いすることを検討しています。調べてみると月額制と年額制があるようですが、どちらがお得なのか分からなくて困っています。売上も年々増えているので、適切な選択をしたいんです。
税理士の顧問料は確かに月額制と年額制の2つの支払い方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。サトウさんの事業規模や資金繰りの状況に応じて最適な選択が変わってきますので、詳しく解説させていただきますね。

1.月額制と年額制の基本的な違い
まず基本的な違いから説明します。月額制は毎月一定額を支払う方式で、例えば月額3万円であれば年間36万円の支払いになります。
一方、年額制は1年分をまとめて支払う方式です。多くの税理士事務所では年額制の場合、月額×12ヶ月よりも5〜15%程度割安に設定しています。例えば月額3万円の場合、年額では32〜34万円程度になることが多いです。

年額制の方が安くなるのは魅力的ですね。でも一度に大きな金額を支払うのは資金繰りが心配です。

2.月額制のメリット・デメリット
その通りです。月額制の最大のメリットは資金繰りの安定性です。
月額制のメリット:
・毎月の支払い額が一定で資金繰りが立てやすい
・初期費用を抑えて税理士との契約を開始できる
・契約解除時の損失が最小限(未払い分のみ)
・事業の成長に合わせて契約内容を見直しやすい
特に開業間もない個人事業主や、季節変動が大きい事業をされている方には、月額制が適しています。例えば、農業関連事業で収入が特定の時期に集中する場合、毎月の固定費として計上しやすいメリットがあります。

月額制のデメリット:
・年間の総支払額が年額制より高くなる
・毎月の支払い手続きが発生(自動引き落としでない場合)
・税理士側の事務処理コストが高いため、サービス内容が限定される場合がある
実際に月額制を選択する場合の注意点として、契約書で「年度途中での解約時の取り扱い」を必ず確認してください。一部の事務所では、確定申告まで含めた年間契約として、途中解約でも残りの月数分を請求される場合があります。

なるほど、契約内容をきちんと確認することが大切なんですね。年額制についても教えてください。

3.年額制のメリット・デメリット
年額制のメリット:
・月額制と比較して5〜15%程度の割引が受けられる
・年間の経費として一括計上でき、節税効果が高い
・支払い手続きが年1回で済む
・税理士との関係が安定し、より手厚いサービスを受けやすい
年額制の最大のメリットは経済的な利得です。例えば月額3万円の場合、年額制では32万円程度になることが多く、年間4万円の節約になります。これは事業所得や不動産所得として申告する際に、支払手数料として全額経費計上できるため、実質的な節税効果はさらに高くなります。

年額制のデメリット:
・初期の資金負担が大きい(30〜50万円程度をまとめて支払い)
・途中解約時の返金対応が複雑
・事業規模の変化に柔軟に対応しにくい
・税理士との相性が合わない場合のリスクが高い
特に注意したいのは、年度途中で事業を廃止したり、他の税理士に変更したりする場合です。一般的に年額制では、未経過分の返金は受けられないか、受けられても手数料を差し引かれるケースが多いです。契約前に必ず確認しておきましょう。

私の場合、個人事業主で売上が年々増えているのですが、どちらを選択すべきでしょうか?

4.会社・事業規模に応じた選択方法
事業規模に応じた選択基準をご説明します。まず、分かりやすく表にまとめてみましょう。

事業形態・規模 | 推奨支払方式 | 月額相場 | 年額相場 | 年間節約額 |
---|---|---|---|---|
個人事業主 (年商500万円未満) |
月額制推奨 | 1.5〜3万円 | 16〜32万円 | 2〜4万円 |
個人事業主 (年商500万円〜1,500万円) |
年額制検討 | 3〜5万円 | 32〜50万円 | 4〜10万円 |
法人 (年商3,000万円未満) |
年額制推奨 | 5〜8万円 | 50〜80万円 | 10〜16万円 |
法人 (年商3,000万円以上) |
年額制一択 | 10万円〜 | 100万円〜 | 20万円〜 |
この表からも分かるように、事業規模が大きくなるほど年額制の節約効果が高くなります。
個人事業主(年商500万円未満):月額制推奨
・資金繰りの安定が最重要
・事業の成長に合わせて契約内容を見直せる柔軟性
・初期投資を抑えて税理士サービスを試せる
個人事業主(年商500万円〜1,500万円):年額制を検討
・ある程度の資金余力があり、年額一括払いが可能
・事業が軌道に乗り、継続的な税理士サービスが必要
・年間4〜8万円の節約効果が大きなメリット

法人(年商3,000万円未満):年額制推奨
・法人税の節税効果を最大化
・安定した税理士サービスで複雑な法人税務に対応
・資金繰り計画に税理士報酬を年間経費として組み込める
法人(年商3,000万円以上):年額制一択
・高額な顧問料(月額10万円以上)での割引効果が大きい
・継続的な経営相談や税務調査対策が必要
・M&Aや事業承継など長期的な税務戦略が重要
サトウさんの場合、売上が増加傾向にあるということですので、現在の年商と今後の見通しを踏まえて判断されることをお勧めします。

見積もりを取る際に、注意すべきポイントはありますか?

5.見積もり時の重要な注意点
見積もり時には以下の点を必ず確認してください。
1. 基本サービス範囲の明確化
・月次監査の頻度(毎月訪問 or 3ヶ月毎)
・記帳代行の対象範囲(現金出納帳のみ or 全仕訳)
・確定申告書作成の詳細(青色申告特別控除65万円対応の有無)
・給与計算や年末調整の対応可否
例えば「記帳代行込み」と記載されていても、実際には現金出納帳の作成のみで、預金取引や売掛・買掛の仕訳は別途料金という場合があります。

2. 追加料金の発生条件
・仕訳数が月100件を超えた場合の追加料金
・税務調査対応費用(立会い日数×3〜5万円が相場)
・各種届出書作成費用(開業届、青色申告承認申請書等)
・急ぎの相談対応や緊急時の対応費用
特に個人事業主の場合、副業の所得が増えたり、不動産投資を始めたりすると仕訳数が急増することがあります。「月間仕訳数50件まで」という制限がある場合、超過分は1件あたり100〜200円の追加料金が発生することがあります。

3. 支払い条件と契約期間
・月額制の場合:支払日(月末 or 翌月10日等)と支払方法
・年額制の場合:支払時期(契約時 or 年度開始時)と分割可否
・契約期間の縛り(1年更新 or 自動更新)
・中途解約時の取り扱い(違約金の有無、返金条件)
年額制で特に注意したいのは、「4月契約で翌年3月まで」という年度契約と「契約日から1年間」という満期契約の違いです。前者の場合、12月に契約しても翌年3月までの4ヶ月分しかサービスを受けられないことがあります。

実際に契約する際の交渉ポイントはありますか?

6.効果的な契約交渉のコツ
1. 段階的な契約方法の提案
初年度は月額制で始めて、税理士との相性やサービス品質を確認した上で、2年目から年額制に移行する方法があります。多くの税理士事務所では「初年度お試し価格」として、年額制相当の月額料金を設定してくれる場合があります。

2. 複数年契約での割引交渉
年額制でさらに2〜3年の複数年契約を結ぶことで、追加的な割引(5〜10%)を受けられる場合があります。ただし、事業環境の変化リスクを十分に検討した上で判断してください。

3. サービス内容のカスタマイズ
標準的なパッケージではなく、必要なサービスのみを組み合わせることで、コストを最適化できます。例えば:
・記帳は自社で行い、チェックと申告書作成のみ依頼
・月次監査は3ヶ月毎にして、その分料金を下げる
・電話相談は回数制限を設けて基本料金を抑える
このような交渉により、月額制でも年額制でも実質的なコストパフォーマンスを向上させることができます。

7.まとめ:最適な選択のための判断基準
最後に、月額制と年額制の選択基準をまとめます。
月額制を選ぶべき場合:
・開業から3年以内で事業が不安定
・年商500万円未満で資金繰りが厳しい
・初めて税理士と契約する
・季節変動が大きい事業を営んでいる
年額制を選ぶべき場合:
・年商500万円以上で安定した収益
・資金余力があり、一括払いが可能
・長期的に税理士との関係を継続予定
・節税効果を最大化したい

とても詳しく教えていただき、ありがとうございました。私の場合は現在の事業規模を考えると、まずは月額制で始めて、来年度から年額制に移行するのが良さそうですね。

それは賢明な判断だと思います。税理士選びは料金体系だけでなく、サービス品質や相性も重要な要素です。
複数の税理士事務所から見積もりを取り、料金体系だけでなく、対応スピードや専門性、コミュニケーションスタイルなども総合的に比較検討することをお勧めします。良い税理士との出会いが、サトウさんの事業発展の大きな支えになることを願っています。

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