特定口座の確定申告ルールを税理士が解説|損益通算・繰越控除・配当控除の注意点

特定口座の確定申告ルールを税理士が解説|損益通算・繰越控除・配当控除の注意点
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特定口座の確定申告にはルールがあり、使い方次第で得にも損にもなります。

特定口座を確定申告する目的とリスク

特定口座を確定申告する目的は、もちろん源泉徴収された税金を取り戻すためですよね。でも確定申告をすると、住民税非課税世帯から外れてしまったり、国民健康保険料が上がってしまったり、かえって損することにもなりかねないのです。

特定口座の確定申告には決められたルールがあります。それをうまく使えるかどうかで損得が大きく違ってきます。「確定申告なんてやらなければよかった」と後から後悔しても手遅れです。ルールとリスクを十分に知って、自分に勝ち目があると判断できた人だけが確定申告をするようにしましょう。

⚠️ 注意

株式投資の確定申告にはリスクが潜んでいます。目先の還付金ばかりに気を取られて、足元をすくわれないように注意してください。

今回のテーマは、損益通算・譲渡損失の繰越控除・配当控除という3つの手法について、特定口座の確定申告ルールをうまく使って所得のアップを抑えることです。

📝 このセクションのまとめ

  • 特定口座の確定申告の目的は源泉徴収された税金の還付
  • 申告することで所得が上がり、住民税非課税世帯から外れるリスクがある
  • ルールとリスクを理解した上で申告するかどうかを判断することが重要

確定申告すると所得が上がる仕組み

特定口座を確定申告しない場合、源泉徴収されてそれで終了です。この場合は所得には影響しませんから問題は発生しません。

しかし特定口座を確定申告すると、所得がアップしてしまうのです。これがデメリットです。まるで税金を返すのと引き換えに所得がアップしてしまう仕組みになっているかのようです。

申告の種類合計所得金額への影響総所得金額等への影響
損益通算(譲渡益>譲渡損)差額分がアップ差額分がアップ
譲渡損失の繰越控除(譲渡益を申告)譲渡益がそのまま上乗せ残った譲渡益分がアップ
配当控除(配当所得を申告)配当所得がそのまま加算配当所得がそのまま加算

合計所得金額がアップすると、次のような弊害が生じます。特に年金受給者の方は注意してください。

  • 住民税非課税世帯の判定に合計所得金額が使われるため、非課税世帯から外れてしまう可能性がある
  • 扶養されている配偶者が確定申告すると、扶養から外れてしまうことがある

また、総所得金額等がアップすると、以下の費用が上がってしまいます。会社員の方には影響はありませんが、個人事業者・フリーター・年金受給者にはきつい影響が出ます。

  • 国民健康保険料
  • 後期高齢者医療保険料
  • 高額療養費など医療・介護費用

📝 このセクションのまとめ

  • 確定申告すると合計所得金額・総所得金額等がアップする
  • 住民税非課税世帯の判定や扶養の判定に影響が出るリスクがある
  • 国保料・後期高齢者医療保険料・高額療養費にも影響する

特定口座の確定申告ルール①:口座ごとに申告を選択できる

国税庁から案内されているルールを順番に見ていきましょう。まず1つ目のルールです。

📌 ポイント

申告するかどうかは口座ごとに選択できる。
ただし、1回の譲渡ごと・1回に支払いを受ける上場株式の配当ごとの選択はできない。

例えばSBI証券と楽天証券の2つの特定口座を持っていたとしましょう。口座ごとに選択できるので、SBI証券だけ申告して楽天証券は申告しない、といったことができます。

ただし、SBI証券を申告する場合でも、「譲渡した銘柄のうち200万円分の銘柄は申告するけど100万円分の銘柄は申告しない」といった銘柄別の選択はできません。申告するならSBI証券の特定口座の全ての譲渡を申告しなければならず、合計額をまとめて申告することになります。

📝 このセクションのまとめ

  • 申告するかどうかは「口座単位」で選択できる
  • 同一口座内の銘柄ごと・配当ごとの選択はできない
  • 口座全体の合計額で申告することになる

特定口座の確定申告ルール②:譲渡所得と配当所得はどちらか一方だけの申告も可能

2つ目のルールです。

📌 ポイント

譲渡所得の黒字の金額と配当所得の金額のいずれかのみを申告することもできる。
ただし、譲渡損失の金額を申告する場合には、配当所得の金額も合わせて申告しなければならない。

例えば、SBI証券の譲渡所得の黒字300万円は申告するけど、同じSBI証券の配当100万円は申告しない、ということができます。逆に配当だけ申告することも、両方とも申告することも可能です。譲渡所得が黒字であれば、このように柔軟に選択できます。

注意が必要なのは譲渡所得が赤字の場合です。楽天証券で譲渡損失が300万円あるケースを例にすると、譲渡損失300万円を申告するなら、同じ特定口座内の配当100万円も合わせて申告しなければならないルールになっています。

これは、口座内のネットの損失200万円(譲渡損失300万円-配当100万円)が損益通算や繰越控除の対象になるためです。損失300万円だけを抜き出して損益通算や繰越控除の対象にすることはできません。

譲渡所得の状況申告の選択肢
譲渡所得が黒字の場合譲渡所得のみ申告・配当のみ申告・両方申告・どちらも申告しない、の4択から選べる
譲渡所得が赤字の場合損失を申告するなら同口座内の配当も必ず合わせて申告しなければならない

📝 このセクションのまとめ

  • 譲渡所得(黒字)と配当所得はどちらか一方だけの申告が可能
  • 譲渡損失を申告する場合は、同口座内の配当も必ず申告しなければならない
  • 損益通算・繰越控除の対象はあくまで口座内のネットの損失額

特定口座の確定申告ルール③:一度申告したら取り消し・追加は一切できない

3つ目のルールです。

⚠️ 注意

譲渡所得の金額または配当所得の金額を一旦申告したら後から取り消すことはできません。逆に、譲渡所得の金額または配当所得の金額を含めないで申告した後に追加することもできません。後から修正は一切できないため、慎重に判断する必要があります。

📝 このセクションのまとめ

  • 一度申告した内容は後から取り消せない
  • 申告しなかった内容を後から追加することもできない
  • 申告前に十分シミュレーションして慎重に判断することが必須

具体的な数値例で考える損益通算の活用法

ここからは具体的な数値を使って解説します。以下の状況を前提とします。

証券会社譲渡損益配当状況
SBI証券譲渡益 +300万円100万円黒字のため所得税20.315%が源泉徴収済み
楽天証券譲渡損 △300万円100万円赤字

楽天証券は赤字なので、確定申告で損益通算をして税金を取り戻そうと考えるわけです。楽天証券については、譲渡損失300万円を申告するとルール上、同口座内の配当100万円も合わせて申告が必要です。よってネットの損失は200万円となります。

悩むのはSBI証券の扱いです。次の3つの選択肢があります。

  • 譲渡益300万円だけを申告する
  • 配当100万円だけを申告する
  • 譲渡益と配当の合計400万円を申告する

なお、楽天証券のネット損失が200万円ですから、合計400万円の申告はさすがに過剰です。300万円か100万円か、どちらにするかという判断になります。

SBI証券の申告内容損益通算後の残額合計所得金額への影響特徴
譲渡益300万円を申告譲渡益 100万円が残る(300-200)100万円アップ還付金は多いが、住民税非課税世帯から外れたり国保料が上がるリスクあり
配当100万円を申告譲渡損 100万円が残る(100-200)影響なし(損失が残るため)還付金は少なくなるが、所得アップの弊害を避けられる。残った損失100万円は翌年の繰越控除へ

📌 ポイント

弊害(住民税非課税世帯の喪失・国保料アップ等)を避けたい人は、SBI証券の配当100万円だけを申告する方法が有効です。還付金は少なくなりますが、合計所得金額への影響をゼロに抑えられます。残った譲渡損失100万円は翌年の繰越控除に回すことができます。

📝 このセクションのまとめ

  • SBI証券の譲渡益300万円を申告すると損益通算後に100万円が残り、所得がアップする
  • SBI証券の配当100万円だけを申告すれば、損益通算後に損失100万円が残り、所得への影響はゼロ
  • 残った譲渡損失100万円は翌年の繰越控除として活用できる

翌年の譲渡損失の繰越控除はどう活用するか

翌年は楽天証券での取引はなく、SBI証券だけで取引があり、前年と同じ損益(譲渡益300万円・配当100万円)だったという想定で考えます。繰り越されてきた譲渡損失は100万円です。

この状況で譲渡益300万円を申告するのは得策ではありません。繰越損失100万円と相殺しても200万円の譲渡益が残り、所得が大きくアップしてしまうからです。

現実的な選択肢は次の2つです。

選択肢内容総所得金額等への影響向いている人
配当100万円を申告する繰越損失100万円と相殺してちょうどゼロになる影響なし弊害の影響が軽微な人・税金を取り戻したい人
何も申告しない繰越控除を諦める影響なし弊害の影響がきつい人

📌 ポイント

配当100万円だけを申告して繰越損失100万円と相殺すれば、ちょうど差し引きゼロになります。この場合、総所得金額等はアップしないため、国民健康保険料等の上昇を避けながら源泉徴収された税金を取り戻すことができます。

📝 このセクションのまとめ

  • 繰越損失がある翌年は、譲渡益を全額申告すると所得が大幅アップするリスクがある
  • 配当だけを申告して繰越損失と相殺する方法が有効なケースがある
  • 弊害の影響がきつい場合は申告を諦めることも一つの選択肢
  • 配当と繰越損失がちょうど相殺できれば、総所得金額等への影響をゼロにできる

まとめ:特定口座の申告ルールの枠組みを活用しよう

今回は分かりやすく数値を使って解説しましたが、実際にはさまざまなケースが出てきます。特定口座の申告ルールの枠組みの中で、自分の状況に合った最適な申告方法を選んでいくことが大切です。

改めて3つのルールを整理しておきましょう。

  1. 申告するかどうかは口座ごとに選択できる(銘柄別・配当別の選択は不可)
  2. 譲渡所得(黒字)と配当所得はどちらか一方だけの申告も可能(ただし譲渡損失を申告する場合は同口座内の配当も必ず申告)
  3. 一度申告したら取り消し・追加は一切できない

これらのルールを理解した上で、住民税非課税世帯の判定・扶養の判定・国民健康保険料などへの影響を事前にシミュレーションしてから申告するかどうかを判断してください。

⚠️ 注意

特定口座の確定申告は、「うまく使ったもん勝ち」のルールがあります。しかし、後から修正ができないため、申告前に十分な検討と慎重な判断が必要です。不安な場合は税務の専門家に相談することをおすすめします。

終わりに

本記事の内容は YouTubeチャンネル 税理士KOBAYASHIちゃんねる の下記動画を参考に作成しています。AIによる書き起こしを活用しているため、誤字脱字がある可能性があります。ご了承ください。
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